奥長瀞自然渓 武州最大の湯量をたたえる大浴場
「満願の泉とカッパ橋」作・小笹孝壽

 真っ赤なお天道様が東の空に、ゆっくり昇りはじめると霞が棚引き、花がいっぱい咲き乱れ、小鳥は水辺にさえずり、秩父華厳の滝より落ちる谷川はいつしか紅葉に赤く染まりそれはそれは美しい所、武蔵の国は、秩父郡の秩父34番水潜寺近くの小さな小さな村里の昔し昔の話だとさ。
 ここに、古老だんべえ取り仕切る村人とカッパ勝五郎の一族が仲良く暮らしておったそうな。
 実りの秋の収穫も終わり陽気も段々冷え込んでくると、村のだんべえが「あんまり寒くならねえうちに南向きの山穴、三角穴にいくべえやー」と声をかけると村人が川を渡り、南の山に引越しを始めるのだった。そんな時、何時もカッパの勝五郎親分がカッパ達に号令を出し、村人の荷物が川を渡る時、水に濡れねえ様に引越しを手伝っていたそうな。村人達は、木枯らしがピューピュー吹く寒い時でも、雪がどんなに降っても三角穴で温かく暮らしていたそうだ。暑くなって来ると、だんべえが「涼しい北向の四角穴に引越しすべやぁー」と声を掛けると、カッパ達が村人の荷物を威勢良くヤッコラサー、ヤッコラショー、ドッコイシャー、ヤットコショと川を渡る荷物も手慣れたもので事故もなく、いつも夕方には引越が終わっていた。引越しが終わると村人の作った、果物や野菜とカッパが取った魚で、丸い月が山に隠れるまで、カッパ天国で飲んだり、歌ったり村人とカッパはいつまでも、いつまでも平和に暮らしておったそうな。

 時に、この年の八月は暑かったそうな。
 来る日も、来る日もカンカン照りの暑い日が続いたそうな。
 神様が住むと云われた城峯山も草や木が立ち枯れになって行った。
 こりゃあひでえ暑さだ、村人はこんなに照りこんで雨が降らねえのは初めてだとなげいた。
 村人達は、雨乞山に登ってお祈りをしたが、いっこうに降りそうもねぇ、今日も雨が降らねえなぁー。半ば諦めた思いで空を見上げているだんべえのところへ村の若者が血相を変えて飛んできた。
 「大変だ、大変だ、カッパ達が皆んな死んでしまう」というのだ、急いでだんべえが川に行ってみると川の水が一適もなくカッパの連中は、石の影や大きな木の根元に横たわり体の色も青色から茶色に変わり息も絶え絶えになっていた。
 だんべえが、カッパの勝五郎を見つけ「カツしっかりしろ」と声を掛けると「もうだめだ長いことお世話になったが頭の皿が干割れそうだ、ほんとにお世話になったがな」と小さな声を振り絞ってお礼を言うとガックリ倒れた。だんべえはしばらく腕を組んでいたが、村の人達に皆んな集まれと号令をかけた。
「いいかカッパ勝五郎達を死なしてはなんねえ、観音様の下から湧き出ている満願の泉が体に良く効くちゅうから、水の汲めるものなら何でもいいから持って出てこい、泉を汲んで手繰りでカッパの頭の皿に掛けてやれ」と言った。村人達は老人も若者も女も子供も桶にヒシャク、ナベやヤカンやカメやツボまで次から次へと手繰りは続くヨッコラセー、ヤッコラショー、ヨッコラショ、ドッコイショ、お天道様も西の山に傾き日が暮れようとした、その時、カッパの勝五郎が微かに動いた。
「おいしっかりしろ勝五郎――」とだんべえが声を掛けるとプルプルと身体が大きく動いた。すると、風船に空気が入った様にみるみるうちに身体が青くなり、カッパの皿も瑞々しくなった。次から次へとカッパ達が元気を取り戻した「ありがてえ ありがてえ」とカッパ達は村人に何度も何度も頭を下げてお礼を云ったそうな。


 それから間もなく村人達が引越しをするとき、難儀をしていた日野沢川に大きな丸太橋が掛かったそうな。カッパの連中が村人たちにお礼の記しに掛けたのだと云う。
 さて、それから間もなく江戸は浅草、六十四州のカッパの大親分から浅草に橋を掛けると云う。武蔵の国は、秩父郡に橋を掛ける名カッパがいると水の便りに聞いたという。江戸より是非、応援を頼むとの伝言が届いた。
 カッパの勝五郎は江戸に行って観たいと云うこともあって、この話をだんべえと相談し快く引き受けたそうな。だんべえは、江戸に行くのは寂しいが、カッパの勝五郎の出世の時だ気持ち良く送ってやろうと村で一番でっけえ木をチョンギって橋が掛かるほどの材木でイカダを作ってやったそうな。村人はいっぺい弁当にキュウリ、ナス、カボチャそれに、お酒などイカダに積んでやった。
 カッパ達は、別れを惜しんで村人に何度も何度もお礼を言った、すると城峯山に大雨が降り水嵩の増した日野沢川へ一気に漕ぎだした。村人は見えなくなるまで手を振った、イカダはシブキを浴びて荒川から江戸川、隅田川へとイカダを流し、三日三晩の川旅も、無事浅草につき、休む間もなくいまはなきカッパ橋を、見事掛けたと風の便りに伝え聞き、村人達は、ホッとしたと云う、

元気な顔が目に浮かぶ。
村の古老は、日野沢川のカッパ丸太橋を渡りながら、昨日のことの様に話してくれた。


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